大きな当りを狙う。
というのは、小さな子供は誰もが持つ自分への期待である。わが息子も多分にもれず、その傾向があるようだ。練習試合でも、チームメイトが打つ当りを見て、自分も「よし、かっ飛ばしてやろう!」と思ってしまうのは仕方がない。しかし、打球は自分の体に見合った打球しか飛ばないものだ。同じチームメイトでも体の大きな子供はよく飛ぶ、それに負けじとフルスイングスイングするのは良いが、球がバットに当たらなければどうにもならないし、当たったからと言って、体の大きな子には飛距離は負けてしまう。
そこで、私は息子に対して
「今、君に求められているのは外野の頭を超える打球を打つことではなくて、外野の間をライナーで抜くことだ。」(私)
「そして、三振を減らす事。だから、バットを長く持ちすぎないで、短く持ってスイングのスピードを上げて、鋭い打球を打つ事を考えて打席に立とう。」(私)
「・・・・・」(息子)
「いい?、君の体ではまだ外野の頭を超えて打球を打つのは無理だ。だから、セカンドやショートの頭を超えるライナーを打って、そして、レフトとセンターの間か、ライトとセンターの間を抜けていく打球で、上手くいけばホームラン! そんな打球のイメージを持つようにしよう。」(私)
「・・・うん」(息子)
(外野の頭越えや、フェンスオーバーのイメージを持っている息子には少々きつい言葉だったかもしれない。が、しかし、今の息子にそれを目指して練習させるのはバッティングの基礎を覚えてもらうのに逆効果なのだ。)
「お父さんはね、小学校5年生の時に6年生に混じってチームで4番を打ってたんだ、一番ホームランの数も多かったんだ、でも、その時にお父さんは、チームで一番バットを短く持っていたんだよ。それでも打球は飛ぶんだ。」(私)
「バットを短く持って、更に寝かせて、こんな風にね。(バットを持って構える私)」(私)
「うん」(息子)
「君の体は、もう少ししたら急に大きくなるよ、そうしたら自然に打球は遠くに飛ぶようになる。それまでは、ライナーを打とう! それには今の君のようなアッパー気味のスイングは逆にボールに下に落ちる回転を付けてしまうから、ダウン気味に球を叩いて、うえに上がっていく回転を付けることが大切だ。」(私)
「オッケー!」(息子)
「だから、今のバットを持つ位置を拳ひとつ分空けて持ってごらん。」(私)
「そうそう」(私)
「それで更にバットを少しだけ寝かせて左の肘を少しだけ上げる。それで球を上から叩くようなイメージでバットを振る。」(私)
(息子が私の説明に従って、構える姿をみる、、、、まぁまぁかなー)
「そうそう」(私)
「じゃー、それでお父さんが球を投げるから打ってごらん。」(私)
先ずは息子に、今教えた構えが今の息子には適している事を納得してもらい、バッティング練習をしてみた。ボールを入れるプラスチックのバケツには、約50球の球が入っている、それを4バケツ、合計200球近く打つのだ。これは打つほうも大変だが投げる方も、なかなかしんどいものだ。
最初のバケツは普通の投手の位置よりも3m程度近くから比較的ゆっくりと同じテンポで投げてバッティングフォームの固めに入る。=体に覚えさせるのだ。そして、その時は、ほぼど真ん中に投げてやる。するとカンカンと調子良く打てるようになる。投げるテンポが同じだから、打つ方のタイミングも同じで、しかもど真ん中だから打ちやすい、これで「いける!」という感覚を付けてやるのだ。
結局、これを3バケツ分行い、最後に通常の位置から多少コースもバラつかせて投げた。打ち損じは勿論増えるが空振りは随分と減ったし、高めのボール球に手を出さなくなった。
「お父さん、今のボール? だよね?」(息子)
「ボール! 今のは振ったらダメだ、だから見逃して正解だね。」(私)
そんなやり取りをしながらバッティング練習をしていたら2時間近くも経ってしまった。そろそろ夕飯の時間だ!
「そろそろ帰ろう、お母さんが夕飯作って待ってるぞ!」(私)
「うん!」(息子)
「また、来週練習しようね!」(息子)
「いいよ!」(私)
続く
常葉菊川と日大大垣の決勝戦を息子と観戦した。
といっても甲子園に出向いたわけではなくテレビ観戦だ。
第79回選抜高校野球決勝戦、常葉学園菊川(静岡)が大垣日大(岐阜)に6-5で逆転勝ちして、優勝だ。息子には非常に刺激的だったようだ。理由は無いが常葉菊川を応援していた息子は、8回の裏に逆転すると異常に喜んでいた。
「お父さんッ! 僕、常葉に勝手欲しいんだよねぇー」(息子)
「・・・・」(父)
「絶対、勝って欲しいなぁー!」(息子)
「なんで?」(私)
「わかんない」(息子)
こんな会話をしている最中、8回裏の常葉菊川の攻撃で、日大大垣の2塁手のエラーも絡み、逆転し成功した常葉に向かって
「よーしッ! よっしゃー!」(息子)
とテレビに向かって吼えている息子がいた、そばで妻はニコニコして、その息子の姿を見ていた。私はその試合中、1球1球に付いて、息子が投手だったら、どこに投げる?という質問をして、その結果を観ては、
「やっぱりねぇー」(私)
「あれ?」(私)
という事を繰り返していた。又、2アウトでランナーが2塁にいる場面で、レフと前ヒットでホームインの状況に付いて、
「君達のチームだったら、ホームイン出来ないだけど、どうして彼はホームインできたか分かる?」(私)
などと質問をして、息子がランナーだったら、どういうリードとスタートを切ればいいのか、などと解説を交えて教えた。
「2塁ランナーがホームインできたのはね、投手のモーションと同時にリードを広げて、更に投げた球の球筋を見て、打者が打つ!と思ったら、スタートを切るんだよ。」(私)
「勿論、その球を空振りするかもしれないし、打たないかもしれないけど、そのスタートを切るという行為が君達のチームにはないんだ。」(私)
「うん」(息子)
「空振りしたり、見逃したりしたら、戻れるようにしないといけないから、戻ることも頭に入れてスタートは切る。2アウトだから、バットに球が当たれば、そのままスタートからダッシュ!」(私)
「後は3塁のランナーコーチを見るだけ、手を回していれば、そのまま全力でホームに向かって全力疾走」(私)
「ファールになっても、同じこと、それの繰り返しで、常に先の塁を取る、っていう意識が大切なんだよ。」(私)
「うん」(息子)
これは試合中の1つの説明であるが、気が付いた点は、試合中ずーとしゃべりっぱなしの私であった。
夏の甲子園が楽しみだ。
その時には、もう少し成長した息子と甲子園観戦ができるだろう。
続く。