左右の腕、左右の足、と基本的な部分は大体教えた。
次は、頭の動きや目線の取り方を教えた際の状況を書いてみた。
当然、ピッチャーは球を投げる時にキャッチャーを見るが、投球動作の初めから終わりまで、ずーと見ているのが理想とされている。中には元巨人の岡島投手のように球が指先から離れる瞬間は、キャッチャーを見ずに地面方向を向いている投手も中にはいるが、あれは例外だと思うし、現にあの投球フォームは直そうとしたが、それが岡島投手の持ち味であると直さなかった、というエピソードがある、と聞いた。
理想はキャッチャーミットから目を放さない事(目線を切らない、という言い方をしたりする。)ではあるが、塁上にランナーが入れば、そうもいかない。特に右投げの場合は、3塁ランナー、左投げの場合は、1塁ランナーとどうしても、視線にその動きが入って来てしまう場合、目線が一瞬切れてしまう事もある。よくランナーが気になって暴投したというコメントを聞くが、目線が切れてしまった、という事でもある。
又、ピッチャーには、その人の感覚で、投球動作に入る時には、キャッチャーミットを見ているが、途中一旦目を放し、また球が指先から離れる際には、再度見るようにするなど、その人の感覚でしっくり来るものを選ぶ場合もある。
私の場合は、目線が切れていたのを、常にキャッチャーミットに向ける努力をした成果で、多少コントロールが良くなったのを覚えている、ある時期(高校野球をやっている間で、ほんの短い期間、、、2ヶ月程度だったかなぁー)、キャッチャーのかまえるミットに、殆ど狂い無く投げられる自信があったし、実際にバッティングピッチャーをしている時も、面白いように自分の思った通りの場所に投げる事が出来た。多分、あの時期に9分割の的当てに挑戦していたら、随分と良い結果が出た事と思う。
これは蛇足だが、車の運転の時に、センターラインを見て急なコーナーは曲がるべし、と聞いた事がありませんか?!(よくある山道・峠道のグニャグニャした道を想像して頂いてもOKです。)
その時には、コーナーの内側、つまりセンターラインを見て曲がると比較的楽に曲がる事が出来るというものだ、逆にコーナーの外側、縁石やガードレール、道幅を示す線などを見ながらコーナーを曲がると恐怖感一杯のコーナリングの出来上がりである。
これは人間の脳みそが目から入った情報を処理する際に、起こす反射に起因していると思われる。
スキーやスノボーにも同じ現象がある、初めてスキーを習った時には、ターンをする時は、ターンする先を見ろ、と教えられた。見た方向に対して、体が自然に反応するのを利用したものですね。逆に予想外にスピードが出てしまい、怖がって自分の向かっている方向だけを見ていると(ターンしたい方向は見る余裕がない)どんどん、そちらのほうへ向かって行ってしまうのだ、だから怖くてもターンしたい方向を見る習慣を付けると教えられた。
という事で、球を投げる時は、キャッチャーミットから目線を切らない。という行為が実は体が自然と反応する原理を利用するというものだったのだ。
「ここ見て!(私の持つグローブを揺らす)」(私)
「ここ、ここ!(またもや私の持つグローブを揺らす)」(私)
「・・・・・(黙って投球動作に、はいる息子)」(息子)
「・・・・・(じっと、その息子を見つめる父)(私)
「パシっ!」(息子の投げた球が私のグローブに収まった音。)
「それそれ、そんな感じだよ、その感じを忘れないで!」(私)
「うん。」(息子)
「もう1球、いこうか!」(私)
「・・・・(黙って、投球動作にはいる息子)」(息子)
「パシっ!」(再度、息子の投げた球が私のグローブに収まった音。)
「いいねぇー、まるで本物のピッチャーみたいだ!」(私)
「投げた感じは、どう? へんな感じする?」(私)
「大丈夫! 僕覚えたよ!」(息子)
という返事を一応信用する父でした。
続く。